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大阪高等裁判所 平成3年(行コ)33号 判決

控訴人(原告) 陰山英夫

被控訴人(被告) 貝原俊民

被控訴人参加人(被告参加人) 兵庫県知事

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、兵庫県に対し、八九四〇万円を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人・被控訴人参加人

主文と同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、原判決の事実の「第二 当事者の主張」に摘示のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決二枚目裏四行目の「三〇日に」及び五行目の「一〇日に」を、いずれも「支給分の」とそれぞれ改める。)。

第三証拠〈省略〉

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決一八枚目裏九行目から二五枚目裏二行目までに説示のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決一九枚目表一行目の「三〇日に」を「支給分の」と、同じ行の「一・九」を「二・一」と、二行目の「一〇日に」を「支給分の」と、同二四枚目裏八行目及び同二五枚目表四行目の各「決定」をいずれも「制定」とそれぞれ改める。)。

二  なお、本件訴えの適法性の点は訴訟要件として職権調査事項であることにかんがみ、この点について付言するに、当裁判所も、本件訴えは適法であると判断するものであり、その理由は、原判決の説示と同旨であるからこれを引用する(ただし、原判決一七枚目表八行目の「監査請求」から九、一〇行目の「ともかく、」までを削り、同裏六行目冒頭から同一八枚目裏六行目末尾までを、

「(一) 本件訴えが、兵庫県の住民である原告において、本件支給中の一部が違法な公金の支出に当たるとし、兵庫県に代位して、右の違法な公金の支出(にかかる支出負担行為及び支出命令)をした兵庫県知事の職にある被告に対し、本件支給により兵庫県が受けたとする損害の賠償を求めるものであることは、その主張に照らし明らかである。そして、本件支給が地方自治法二四二条にいう「公金の支出」に当たることはいうまでもないから、本件支給が同法二四二条の二に定める住民訴訟における審理の対象となる「普通地方公共団体の長の(違法な)行為」に当たることもまた明らかである。

(二) 被告の本案前の主張2の論旨は必ずしも分明でないが、条例が法令に違反している場合であっても、普通地方公共団体の長が、自らの権限において条例の無効を判断し、その条例を無視して行為することは許されないから、当該条例に基づいてなされた普通地方公共団体の長の財務会計上の行為は、地方自治法二四二条の二にいう「違法な行為」に含まれないと解すべきであるとの点を、本件訴えが不適法であるとする論拠とするものと解される。

しかしながら、地方自治法一七六条四項以下の規定等に照らせば、普通地方公共団体の長は、少なくとも、条例の違法性が重大かつ明白な場合においては、当該条例を執行すべき拘束を受けないものと解するのが相当であり、したがって、長が当該条例の規定に基づいてした公金の支出は、それに固有の違法が認められない場合であっても、右条例の違法性を承継し、違法な公金の支出となるものというべきである。

そうとすれば、条例が違法であることを理由として、右条例に基づく普通地方公共団体の長の財務会計上の行為につき住民が地方自治法二四二条の二の訴えを提起した場合においても、右訴えを当然に不適法として却下すべきものではなく、右支出行為の違法性について本案の審理をなすべきものであるから、被告の右本案前の主張は採用の限りでない。」

と改める。)。

三  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 後藤文彦 古川正孝 川勝隆之)

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